Aさんの夢

 私が商工会に入ってしばらく経った頃のお話です。
 朝が弱い私は、うっかり事務服のスカートのファスナーを上げるのを忘れてしまったことがありました。そのまま職場へ行き、何も気にせず「おはようございま~す」と挨拶をした後、掃除をしようと歩き始めると後ろから人影が・・・。振り返ると、Mさんでした。小さな声で「Kさん、後ろ開いてるよ」と教えてくれました。私は恥ずかしさを感じながらも「うわー、開いてた!恥ずかしいーー!」と大きな声で言ってしまい・・・みんなには当然笑われました。
 実は、そんなことが2回程ありました。2回目もMさんが「開いてるよ」と小さな声で教えてくれたにも関わらず、みんなの前で「また・・・!恥ずかしい!」と言ってしまいました。
 その後、みんなで話をしていた中でAさんが「今度はね、俺がKさんに『ファスナー開いてるよ』って教えてあげるんだ」と言いました。それがAさんの夢なのだそうです。一歩間違えると問題発言になりそうな気がしないでもないですが・・・。でも、釈明する訳ではありませんが、Aさんの発言に変な意味はまったくありません。何と言っても、Aさんは純粋ですから(過去の記事をご覧ください)。未だに私には何故なのかよくわかりませんが、きっとMさんが羨ましかったのでしょう。
 でも、残念ながら、それから一度もファスナーを上げ忘れたことはありません。Aさん、夢を叶えさせてあげなくてごめんなさい。